根本 重之
公益財団法人流通経済研究所 理事/拓殖大学 名誉教授
山﨑 泰弘
公益財団法人流通経済研究所 理事
コンビニエンスストア(以下CVS)業界の成長を消費者の需要側から考えるために、全国消費実態調査の1999年から2014年までの4期間の調査結果を用いて家計におけるCVSの位置づけとその変化を分析した。
その結果、消費者のCVSでの食料購入額を増やすことができれば、今後もCVSの市場規模は拡大し、店舗数を増やすことができると結論づけた。また、ディスカウントで食品販売を強化するドラッグストアとは競合せず、スーパーマーケットからドラッグストアへ食料の購入をシフトする消費者の補完的な購買先として成長できる可能性も示唆された。成長の余地が大きく獲得すべきは高齢世帯の需要であるが、強みとしていた若年男性の単身世帯では、購入シェアの低下という課題も見られた。
後藤 亜希子
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員
コンビニエンスストアは店舗数増による成長に急ブレーキがかかった。今後もこれまでのようなペースでの店舗純増は見込みにくく、既存店の強化がメインの課題となる。CVS各社が19年度は既存店投資に重点を置くとしており、それが加盟店の収益を増やすことにつなげられるか注目しておきたい。人件費、光熱費の上昇は当面続くと見られ、CVS本部は時短営業や消費期限の迫った商品の値引き販売なども本格的に検討する必要がある。
キーワード: 上位集中、客数の落ち込み、日販の格差、既存店支援投資、複数店経営並木 雄二
法政大学大学院 イノベーション・マネジメント研究科 教授
コンビニエンスストア(以下コンビニ)の提供する「便利さ」は空間価値、時間価値、商品価値に大別され、これらは単独ではなく、組み合わされて意味を持つ。その中でも商品価値、特に品切れは顧客不満足に結びつく重要な項目になる。時間短縮については総合的な価値を見極める必要がある。今後、コンビニは各種のテクノロジーを取り入れ効率化を進めていくが「商い」本来のヒューマン的な側面も見直す必要がある。フランチャイズシステムはそこに参加する人たちの共通の想いを実現していくものであり、お互いのコミュニケーションが大切だ。
キーワード: コンビニエンス・バリュー、フランチャイズシステム、イノベーション、CSポートフォリオ分析、コンビニの未来像土屋 直樹
武蔵大学 経済学部 教授
コンビニの「人手不足」が深刻化し、社会インフラとしての持続可能性が懸念されている。それは、他職種より条件が悪く、低い賃金水準でスタッフを雇用せざるを得ない厳しい経営の実態から生じている。近年その厳しさは、売上げが増えないなか、最低賃金の引き上げが続いてきて、さらに増している。廃棄費用の負担も重い。そして24時間営業やサービス拡大についての、加盟者の不満が顕在化しはじめ、本部との「共存共栄」が難しくなりつつある。時短営業の選択制など加盟者の裁量拡大、利益分配の仕組み自体の見直し等も検討する必要があるだろう。
キーワード: 人手不足、最低賃金、24時間営業、廃棄ロス、社会インフラ神谷 渉
公益財団法人流通経済研究所 客員研究員/玉川大学 経営学部 准教授
日系コンビニエンスストアは、海外展開を着実に拡大している。「日経MJ」の第40回コンビニエンスストア調査では、2018年度の上位4社の海外店舗数は5万9626店舗となり、前年度比6.6%増であった。中国は、日系上位4社のすべてが出店を行っている国であり、日系コンビニエンストアの展開は順調で成長率も高い。現地のコンビニエンスストアも出店を拡大しているものの、収益性などに課題があり今後は再編なども予想される。日系コンビニエンスストアが、中国で現在好調なのは、進出形態や品揃えなどの試行錯誤を重ねてきたことが大きい。成功のパターンを分析すると、現地での展開ステージによって進出形態の使い分けを行っていることや、品揃えやマーケティング面では日本の資産を活用していることが示唆された。
キーワード: 日系コンビニエンスストアの海外展開、中国のコンビニエンスストア、セブン-イレブン、ファミリーマート、ローソン西川 英彦
法政大学 経営学部 教授
池尾 恭一
慶應義塾大学 名誉教授/明治学院大学 経済学部 教授