中村 博
公益財団法人流通経済研究所 理事 /中央大学ビジネススクール 教授
中村 博
公益財団法人流通経済研究所 理事 /中央大学ビジネススクール 教授
コロナ禍による購買行動変容およびDX化の進展によって小売業は変化対応を迫られている。行動変容は6ヶ月継続すると習慣になるとも言われる。また、DX化はスピードが速くキャッチアップすることが大変むずかしい。このような環境変化の中で、食品小売業界で成功している小売業のビジネス・モデルの提供価値について検討した。その結果、利便性価値、経済性価値、ブランド価値、顧客体験価値の4つの価値が重要であるとの結論を得た。
キーワード: Amazon Effect、DX化、ビジネス・モデル、オムニチャネル、顧客体験中川 朗
みずほ銀行 産業調査部
COVID-19下での「新しい生活様式」の社会的浸透および雇用・所得環境の変化は、消費者行動が変化する速度を速めた。こうした消費者行動の変化が構造的要因となることから、小売事業者にとっては①EC化の進展、②差別化された店舗・独自の顧客体験の提供、③購買行動の生活圏化、④サステナブル志向、⑤節約志向に対応する必要があろう。また、新しい生活様式は「店舗に集客し、滞在を促す」従来型小売業の持続可能性に課題を投げかけた。同時にデジタル活用の変化は、消費者と企業とのコミュニケーションが直接的かつ継続的なものに進化する契機となった。こうしたことから、中長期目線では、COVID-19は小売業にとって売り切り型から消費者との継続的な関係を前提とする顧客生涯価値をベースとしたビジネスモデルへの転換を示唆したと考えられる。
キーワード: EC化、顧客体験、生活圏化、サステナブル志向、顧客生涯価値(LTV)鈴木 雄高
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員
新型コロナウイルスの感染が拡大して1年近くが経過したが、収束の兆しが見えない。この状況において、ショッパーの購買行動や意識にどのような変化が生じたかを把握するために、「ショッパー・マインド定点調査」(2021年1月)の結果を分析した。
その結果、「地元で生産・製造された商品を選ぶ」、「店内でなるべく早く買い物を終える」、「事前に買うものを決めて買い物メモをつくる」、「精神的な健康を保つよう心がける」の回答者割合が高まっていることがわかった。
今後、小売業者にとっては、地域密着の度合いを高めることや、デジタル技術の活用により買物体験を向上させることが重要になる。
矢野 尚幸
株式会社ショッパーインサイト データマーケティンググループ 主任コンサルタント
新型コロナウイルス感染症の感染拡大を機に意識が大きく変化し、食品スーパーでの購買行動もこれまでとは大きく異なる傾向を示している。アンケート調査では、買物回数を減らし、1回当たりの買物金額を増やす、混む時間を避けるという意向が見られるが、実際購買履歴データでもそのような動きが見られた。また多くのカテゴリーで販売高が増加しており、特に高価格帯、ストック性のある食材の増加幅が大きかった。
しかし、今後の懸念事項としては、需要が一巡し前年同期ほどの勢いは既に見られないことや、デフレの進行により低価格志向が高まることが挙げられる。
渡邊 秀介
公益財団法人流通経済研究所 研究員
コロナ禍に見舞われた2020年、生活者のスーパーマーケットでの購買行動は変化した。本稿では市場POSデータを用いて、2020年にスーパーマーケットで購買された商品カテゴリーのトレンドを確認する。感染防止用商品を筆頭とする日用品の購買は長期的な増加トレンドを続けているが、食品では一部カテゴリーの散発的な流行が見られるにとどまり、細分類レベルではコロナ収束につながるようなトレンドは現状では見て取れない。
キーワード: スーパーマーケット、市場POSデータ、コロナ禍、商品トレンド、消費財江原 淳
公益財団法人流通経済研究所 評議員/専修大学 ネットワーク情報学部 教授