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機関誌「流通情報」バックナンバー

No.551 | Vol.53 No.2(2021年7月発行)

特集 東日本大震災後10年の農水産物流通とマーケティング

特集にあたって

石橋 敬介
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員

福島県農産物等の流通実態と販路拡大に向けて

武田 裕紀
農林水産省 食料産業局 食品流通課長

 

 福島県農産物(「福島県産農産物等流通実態調査」重点6品目)の出荷量は東日本大震災前の水準まで回復しておらず、全国平均との価格差は徐々に縮小しているものの、一部の品目では全国平均価格を下回る品目もみられる。認識の齟齬を解消するための方策として、行動経済学の知見を活用した同調行動を促す取組は、情報の内容を理解させることには有効である可能性は見えたが、行動そのものを促進することまでは確認できなかった。また、価格差を解消するための福島県農産物のブランド力強化の方策として、「ふくしまプライド。」をコミュニケーションメッセージとした販路拡大、情報発信に取り組んでいる。

キーワード: 福島県産品、農産物流通、流通実態調査、価格形成、販路拡大
福島県産品の価格の状況と消費者の購買に関わる要因の分析

佐々木 舞香
公益財団法人流通経済研究所 研究員

石橋 敬介
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員

 

 本稿では、福島県産品の流通における価格の状況と、消費者の購買に関わる要因について分析を行った。価格に関しては、品目によっては震災後に生じた低価格が未だに続いていることや、価格が回復傾向にある品目でも供給過剰時には他産地産品よりも低価格となる問題を明らかにした。購買の要因については、福島県産品の購買有無に関する要因と、購買品目数に関する要因に分けて分析を行った。この分析の成果の一例として、福島県産品を購入する顧客の間口を広げるには応援消費を促す施策等が有効であり、多くの品目を買ってもらうには他県にない福島県の良さを発信する施策等が有効であることが示された。

キーワード: 東日本大震災、風評被害、卸売市場、購買行動、ゼロ過剰ポアソン回帰モデル
東日本大震災後に成長を遂げたいわき菌床椎茸組合の経営事例

松本 正美
農事組合法人いわき菌床椎茸組合 専務理事

 

 本稿では、いわき菌床椎茸組合の経営事例を紹介する。当組合は、東日本大震災をきっかけに一度は顧客を失ったが、その後事業規模を拡大してきた。その背景には、職員とお客様・お取引先の満足度で日本一を目指す経営理念がある。また、安心・安全の取組を継続して行うとともに、徹底した顧客志向で販売と生産活動を行い、椎茸のブランディングも行ってきた。今後の被災地復興の一助とするため、本稿でその具体的な内容について紹介する。

キーワード: 経営理念、安心・安全、顧客志向、ブランディング、東日本大震災
福島県の桃農家の経営改善のための方策に関する研究

中島 彰一
公益財団法人流通経済研究所 研究員

 

 本稿では、ヒアリング調査を通じて、高価格帯商品の販売を促進するためには、ブランドロイヤルティの形成や消費者の購買行動の後押しに向けた取組が有効であることが示唆された。桃という品目特性上、知らない農家から購入する場合、味や食感が自分の好みと違う可能性があることがスイッチングコストの高さにつながっているとともに、適切に熟した状態で送付することが顧客満足度向上に寄与することから、ブランドロイヤルティが形成されていると考えられる。また、適切な熟度の状態で送付することや安全性に対する情報提供を積極的に行うことが、桃を経験財と捉える消費者と信用財と捉える消費者の両者の購買を後押ししている可能性がある。

キーワード: 東日本大震災、ブランドロイヤルティ、顧客満足、スイッチングコスト、消費者購買行動

視点

野菜加工品の開発輸入にみられる転換期

菊地 昌弥
桃山学院大学 教授

資料紹介

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