神谷 渉
公益財団法人流通経済研究所 客員研究員/玉川大学 経営学部 准教授
若林 哲史
株式会社エレガント・ソサエティ 代表取締役社長
100年に一度のパンデミックとなったコロナ禍は、人々の生活に大きな影響を与えた。リモート勤務やオンライン学習が取り入れられた結果、巣ごもり現象が起こり、新しいビジネス機会も生まれている。小売業界では、テクノロジー導入が急速に進み、顧客サービスや生産性改善に、AIやアルゴリズムが使われ始めている。一方、外部との接触が減っているにも拘らず、人との結び付きが望まれ、地域貢献の姿勢がより尊ばれる傾向が目立ってきた。企業に対しても社会的な責任が求められ、各社、目的を明確にした経営体制を整えつつある。
キーワード: オムニチャネル、リテール・プラットフォーム、ミレニアル世代、エンバイロメンタル、ソーシャル森脇 丈子
流通科学大学 人間社会学部 教授
フランスの食品スーパーでは、注文品を自分の車で店舗まで受け取りに行くclick&collect方式の買い物が成長している。現地では、<drive>と呼ばれるこの購買方式は、消費者にとっての買い物の利便性を広げ、企業にとっても収益の柱に育てるべく投資がなされてきた。さらに、コロナ禍の影響により、今までは<drive>を利用していなかった消費層にも広がりがみられる。郊外にハイパーマーケットを展開するE.Leclerc(ルクレール)が<drive>市場の売上高のおよそ半分を握っているが、都市部では中小規模店舗を数多く有する他の大手スーパーによる徒歩でのclick&collect(drives piéton)も急速に広がりをみせている。
キーワード: click&collect、<drive>、フランス、ハイパーマーケット、宅配李 雪
公益財団法人流通経済研究所 特任研究員
中国のEC市場では、ライフスタイルや価値観の多様化、顧客獲得コストの急増などを背景に、トラフィックとコンバージョンに依存した集中型ECの成長が減速している。一方、SNS、ライブや動画などのコンテンツを活用し、顧客を中心に有効なコミュニケーションを継続的に取りながら、リピート率やロイヤルティを向上させる脱集中型ECが急速に成長している。これに着目したEC大手のアリババやSNS大手のテンセントは、それぞれDtoC、プライベート・トラフィック戦略を打ち出し、メーカーなどの出店企業もしくはパートナーとともに、顧客関係を強化しながら、新たなEC運営形態に挑戦している。
キーワード: EC、脱集中型、顧客接点、DtoC、プライベート・トラフィック閻 湜
専修大学大学院 商学研究科 博士後期課程
渡辺 達朗
公益財団法人流通経済研究所 理事/専修大学 商学部 教授
現在、中国の少なくとも都市部の消費者にとって、EC(電子商取引)が生鮮食品の主要な購買チャネルの1つとなっている。生鮮食品ECが注目されはじめたのは2005年頃で、2011年~12年には大手EC企業が生鮮食品流通に参入してきたが、当初市場の成長は緩やかなものであった。それが、2019年頃から成長軌道に乗り、コロナ禍を経た現在、さらに市場の拡大が続いている。本研究では、生鮮食品EC市場と業界の特徴について整理したうえで、市場の担い手、生鮮ECの展開に必要な能力、能力育成・獲得をめぐる企業間連携に注目して検討する。
キーワード: 中国EC企業、生鮮食品EC、ケイパビリティ、アリババ、プラットフォーマー神谷 渉
公益財団法人流通経済研究所 客員研究員/玉川大学 経営学部 准教授
小売業の顧客接点戦略において、マーチャンダイジングの分野に着目し、顧客接点の多様化が進む中でプライベートブランド(PB)が果たす役割について検討した。まず、欧米の大手小売業において近年PBがどのように変化してきているのかを確認するとともに、ECにおけるPBの導入やD2Cブランドについて概観した。次に、これらの状況をGielens et al.(2021)が示したスマートPL(Private Label)の考え方に基づいて整理を行った。その結果、小売業の顧客接点が多様化する中でPBが果たす役割は高まっており、PBに求められることとして、イメージ志向型への対応の必要性が高まっていること、製品開発における企画者の存在が重要になっていること、価格訴求よりもブランドとしての独自性が重要になっていることが示唆された。
キーワード: プライベートブランド(PB)、EC、D2C、ウォルマート、テスコ藤田 元宏氏
ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社 代表取締役社長 兼
イオン株式会社 執行役副会長
聞き手◎中村 博
公益財団法人流通経済研究所 理事/中央大学大学院戦略経営研究科 教授
菅野 佐織
駒澤大学 経営学部 教授