山﨑 泰弘
公益財団法人流通経済研究所 常務理事
山﨑 泰弘
公益財団法人流通経済研究所 常務理事
ドラッグストア(DGS)1店舗あたりの人口を用いた店舗密度の観点から、成長機会について検討した。全国に店舗網が広がるDGSは顧客接点、販売拠点としての重要度が高まっており、上位企業の競争力は他業態を凌ぐものになっていくと考えられる。またDGSは、すでに日用品販売においては確固たる地位を築いており、今後の成長の鍵は冷蔵・冷凍食品を含む食品販売にあると考えられる。
ただし、直近の出店ペースでは、近い将来に店舗数が飽和することが懸念され、さらなる成長を実現するためには、店舗の損益分岐点を下げることが必要になる。その方法として、顧客接点を活用したヘルスケアに関連したサービスや広告など物販以外の収益モデルを作ることや、製造小売として収益性の高い価値あるPB商品を開発することなどに可能性があると考察した。
重冨 貴子
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員/ドラッグストア研究会 主宰
本稿では、ドラッグストア業態の直近の展開状況を概観し、商品構成などの質的な変化や、経営戦略の方向性、「新型コロナウィルス感染症」(COVID-19)流行の影響などを踏まえて、業態の優位性と課題点を検討した。ドラッグストア業態の食品・非食品の粗利ミックスによる収益モデルは優位性が高く、COVID-19流行下でも購買動向は安定的に推移し、主要リアル小売業態のなかで高い成長性を保っている。経営戦略の方向性(3タイプ)は時系列変化が小さく、ドラッグストアの取引先は、今後も各々の方向性に沿った営業提案を行うことが重要だと考えられる。今後は狭小商圏化の進行に伴い、各社がより一層効率化や収益性強化に迫られると予想される。食品強化は来店頻度や買上点数の増加効果をもたらす一方、同質化のリスクもあり、食品購入目的での来店客を非食品購入につなげる方策を検討する必要があるだろう。国内市場の深耕による「プライマリー・ストア化」を図るとともに、中長期的には海外市場も含めた成長戦略が求められると考えられる。
キーワード: ドラッグストア、品揃え、食品、COVID-19、経営戦略本藤 貴康
東京経済大学 経営学部 教授
購入金額という行動的ロイヤルティに焦点をあてて、全国の地域密着型ドラッグストア企業のID-POS分析に基づいた、新規顧客の購買行動についての研究成果である。新規顧客のなかで翌年離反客と翌年継続客では買上カテゴリー数に顕著な差が生じている。新規顧客の翌年実績については年間購入金額以上に買上カテゴリー数の影響力が大きい。買上カテゴリー数は店内動線長に比例し、それぞれのカテゴリーの個々の需要発生時に来店目的を生じさせる。ロイヤルティ形成に貢献するカテゴリーとしては、習慣的消費をともなうカテゴリーのほかに、地域の業種店減少という背景要因から、業態店でも限定的な品揃えにとどまっているようなカテゴリーによる来店誘導の重要性が高まっている。
キーワード: ストア・ロイヤルティ、顧客購買行動、ドラッグストア、買上カテゴリー数、新規顧客中川 宏道
名城大学 経営学部 准教授
本研究では、ドラッグストアにおけるポイントカードの知覚価値を決定する要因として、ポイントカードの設計要因(ポイントの提供方法とポイント特典の内容の要因)と消費者要因について検討をおこなった。その結果、前年や前月の購買実績に応じて顧客をランク付けする顧客階層型、ある決められたポイント数までポイントを貯める必要がある非連続型、値引きではなく景品などを提供する間接的特典はポイントカードの知覚価値を低くすること、提携型(Tポイント)はポイントカードの知覚価値を高めることが明らかになった。消費者要因としては、ポイント使用経験のない顧客はポイントカードの知覚価値を低くすること、入店前にポイント使用決定をする顧客ほどポイントカードの知覚価値が高いことなどが明らかになった。
キーワード: ポイントカード、ロイヤルティ・プログラム、ドラッグストア、顧客階層、顧客満足池野 隆光氏
ウエルシアホールディングス株式会社代表取締役会長/
日本チェーンドラッグストア協会会長
聞き手◎中村 博
公益財団法人流通経済研究所 理事/中央大学大学院戦略経営研究科 教授
石井 裕明
青山学院大学 経営学部 准教授