守口 剛
公益財団法人流通経済研究所 評議員/早稲田大学商学学術院 教授
川上 智子
早稲田大学大学院 経営管理研究科(ビジネススクール) 教授
マルチステークホルダー資本主義の言葉に代表されるように、環境や社会に好影響を与える社会貢献志向のCSRから、高次の目的としてのパーパスを掲げ、意識の高い経営を行うコンシャス・キャピタリズムへの転換が求められている。本稿では、まずCSR、ESG、CSV、SDGs、サーキュラー・エコノミーといった近接するコンセプトを利益/寄付志向、社会/企業志向という2軸で整理する。さらにコンシャス・キャピタリズムの中心的概念であるパーパス(存在意義)を明らかにし、より良い世界のためのマーケティング(BMBW)としてのパーパス・ドリブン・マーケティングの概念を示し、企業が自社のパーパスを起点にマーケティングを行うことの 重要性を明らかにする。
キーワード: パーパス、CSR、社会的価値、経済的価値、コンシャス・キャピタリズム伴 大二郎
合同会社db-lab 代表CEO/株式会社ヤプリ エグゼクティブスペシャリスト/株式会社顧客時間 プロジェクトマネージャー
本稿では、消費者の変化に対応して成功を収めている企業としてAllbirds、CVS Health、Nike、e.l.f.の事例を挙げ、パーパスドリブンの本質が経営の意志決定軸であり、マーケティング戦略であることを示した。従来型企業が経営転換をするためには、他社とのパートナーシップを組みながら解決していく必要がある。また、日本企業については、デジタルトランスフォーメーションとサステナビリティトランスフォーメーションを連動して進めていく必要がある。
キーワード: パーパスドリブンコンシュマー、D2C、サステナビリティトランスフォーメーション、カスタマーセントリック、CSV西尾 チヅル
筑波大学 ビジネスサイエンス系 教授
本稿は、筆者が2019年と2021年に実施した消費者調査をベースに消費者のエシカル志向や行動の特徴を紹介すると共に、コロナ禍の影響を考察した。加えて、西尾・石田のモデル(2014)を用いて、消費者のエシカル行動の促進要因や阻害要因についても明らかにした。消費者は、福祉・介護問題と同等、気候変動やエネルギー資源問題も深刻なエシカル問題と捉えており、自らも課題解決に積極的に取り組むべきと思っているものの、どうすればよいかわからない状態であること、また、個人のエシカル行動は家族や友人等の社会規範の影響を最も強く受けることが示された。これらの結果を踏まえて、企業のマーケティング施策を示した。
キーワード: SDGs、エシカル志向、エシカル行動、新型コロナ感染症、懐疑心白鳥 和生
日本経済新聞社 編集総合編集センター 調査グループ 調査担当部長
生活者の意識変化や、地球環境問題をはじめとする社会課題が山積する中、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの小売業界各社は「サステナビリティ(持続可能性)」を重視した経営が求められている。エシカル(倫理的)消費に対応したプライベートブランド(PB)開発や環境に配慮した業態開発などが活発化している。そこでは「なぜ我が社は社会で存在しているのか」あるいは「どうしたら社会に受け入れられるのか」を問う姿勢が欠かせず、生活者からの共感が必要になる。
キーワード: エシカル消費、サステナビリティ、SDGs、ESG経営、パーパス宮﨑 達郎
公益財団法人生協総合研究所 研究員
本稿では、地域生協や日本生活協同組合連合会によるエシカル消費に関連した取り組み等に関して簡潔に整理しつつ、2021年度全国生協組合員意識調査の結果から、組合員のエシカル消費の状況が、それが所属する地域生協のイメージや好感度にどの程度つながっているのかを検討した。
PB商品であるコープ商品に占める、エシカル消費対応商品の割合は堅調に増加している。また、組合員は一般消費者と比較してエシカル消費に取り組む割合が高く、所属する地域生協についてSDGsやエシカル消費に関連したイメージがあると感じる組合員ほど、所属する地域生協に対する好感度が高まる傾向が示された。
寺崎 竜雄
公益財団法人日本交通公社 常務理事