加藤 弘貴
公益財団法人流通経済研究所 専務理事
平澤 崇裕
国土交通省 総合政策局 物流政策課 課長
「総合物流施策大綱(2021年度~2025年度)」(令和3年6月15日閣議決定)では、「①物流DXや物流標準化の推進によるサプライチェーン全体の徹底した最適化(簡素で滑らかな物流)」、「②労働力不足対策と物流構造改革の推進(担い手にやさしい物流)」、「③強靱で持続可能な物流ネットワークの構築(強くてしなやかな物流)」の3つを、大きな柱として打ち出している。本稿では、我が国を取り巻く物流の現状を解説するとともに、大綱策定から1年余りが経過した現在、大綱に位置付けられた施策の取組状況について、担い手にやさしい物流を中心に、3つの大きな柱に沿って紹介する。
キーワード: 物流DX、標準化、労働環境の整備、労働力不足対策、持続可能性橋本 雅隆
明治大学専門職大学院 グローバル・ビジネス研究科 教授
物価高の中で物流では2024年問題が迫っている。流通業でも商品が「届かない」危機感が生まれつつある。ドライバー不足問題に対処するため、経済産業省と国土交通省によって関連する対策の検討会議が複数立ち上げられた。物流資材の標準化や商流・物流情報基盤の構築をベースに流通の垂直統合と水平連携による物流拠点と輸送ネットワークのシェアリングを目指したフィジカルインターネットの実現に向けたロードマップと消費財分野のアクションプランが作成された。本稿では、こうしたビジョンの実現に向けた流通業の取り組みと、その前提となる製配販の連携的取り組みについて論じる。
キーワード: フィジカルインターネット、DX、オペレーション革新、物流需要密度、地域資源田代 英男
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員
我が国では、2024年度からのトラックドライバーへの時間外労働の上限規制等の適用や、2050年までにカーボンニュートラルへの対応が求められており、近い将来には国民生活や経済活動に不可欠な物資がこれまでのように運べなくなる事態が起きかねない危機的な状況にある。こうした背景のもと、物流が直面している諸課題を解決し、更なる物流効率化を進めていく必要性が一層高まっている。
そこで、我が国の物流効率化のこれまでの取り組み状況を明らかにしたうえで、加工食品・日用雑貨業界のフィジカルインターネット実現に向けた課題を整理するとともに、今後の方向性として「物流効率化の取り組みの可視化」、「物流効率化を推進する組織の確立」の2点を挙げた。
吉間 めぐみ
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員
迫りくる物流2024年問題に対応していくために、物流効率化は必須となっている。農産物の物流も例外ではなく、特に地方の産地市場にとって物流問題は大きな課題の1つである。その農産物の中でも、花きの物流は難度が高いといわれる。本稿では、花きの国内物流について、特に地方から大田市場に向けた物流ではなく、地方から地方市場への共同配送実証を踏まえ、花き特有の物流の特徴と課題を明らかにした。その上で、今後必要となることは、[1]荷主の意識強化、[2]主要市場の活用及び全国の拠点化、[3]共同配送の3つになると考える。
キーワード: 花きの国内物流、物流2024年問題、物流効率化、地方市場、中継輸送池田 真志
拓殖大学 商学部 教授
鶴羽 順氏
株式会社ツルハホールディングス 代表取締役社長執行役員
聞き手◎中村 博
公益財団法人流通経済研究所 理事/中央大学大学院 戦略経営研究科 教授