吉間 めぐみ
公益財団法人流通経済研究所 上席研究員
武田 裕紀
農林水産省 大臣官房 新事業・食品産業部 食品流通課 課長
トラック運送業の時間外労働制限施行まで残り1年となり、その制限による輸送能力の不足が懸念されている。特に農産・水産品においては影響が大きく、長距離輸送が不可避である青果物の物流の持続性に課題が生じている。本稿では、青果物生産の現状や主要な品目、長距離輸送や積載率、荷役と待機時間などについて整理し、青果物物流の持続性確保に向け当省が主催する「青果物流通標準化検討会」での対応や策定したガイドラインについて紹介する。
今後は、上記ガイドラインの推進状況のフォローアップに加え、例えばパレット単位での流通が可能となるような等階級の見直しなどの残課題に対応すべく検討を進めていく。
矢野 裕児
流通経済大学 流通情報学部 教授/物流科学研究所長
ドライバー不足、2024年問題といった供給制約により、物流はまさしく危機的状況といえる。2030年には、輸送能力の34.1%が不足するという推計も出ている。全国で生産された農産物を全国の消費地に輸送することを前提とした現在の農産物物流は、その影響を最も受けることが予想される。本稿では、物流危機の現状、2024年問題とその影響を説明する。さらに、農産物物流が長い拘束時間、パレット化の遅れ、小ロット多頻度輸送という課題を抱えているなか、農産物物流が今後検討すべき方策について述べていくものである。
キーワード: 物流、物流危機、2024年問題、農産物、物流ネットワーク谷津 恭輔
株式会社丸和運輸機関 ソリューション営業部 部長
(聞き手)田代 英男
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員
トラックドライバーの労働力不足と高齢化、2024年度より適用される時間外労働時間規制等により、生活必需物資が運べなくなる等の物流問題が発生することが懸念されている。また、2030年には全国の約35%の荷物が運べなくなる試算も出ており、長期的な視点を持ったうえで物流改善を図っていく必要があると言える。
丸和運輸機関では、こういった課題に対して「商物分離」、「AI等の活用及びDX化」、「産直プラットフォームの構築」、「災害対策」といった視点より対応を進めている。そこで、物流の2024年問題に向けた対応について議論した後、丸和運輸機関の低温食品物流の取り組みの方向性について、事例を交えながら示す。
田代 英男
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員
物流は、国民生活や経済活動を支える不可欠な社会インフラであるが、担い手不足の深刻化や2024年度からのトラックドライバーへの時間外労働の上限規制等の適用、カーボンニュートラルへの対応等も求められており、国民生活や経済活動に不可欠な物資が運べなくなる事態が起きかねない危機的な状況にある。こうした状況の中、今後最も影響を受けるであろう農産物の輸送において、直面している諸課題を解決し、更なる物流効率化を進めていく必要性が一層高まっている。
そこで、農産物の輸送について現状を明らかにし、実証事業により実態を踏まえ、パレット輸送を推進するための方向性として、「パレット輸送の取組状況の実態把握」、「情報共有」を位置付けた。
吉間 めぐみ
公益財団法人流通経済研究所 上席研究員
いわゆる「物流の2024年問題」は農産物物流に大きな影響を与える。不足する輸送能力は3割といわれ、荷主から配送先まで軒並み物流効率化を謳い始めた。様々な物流効率化を実施していくべきであるが、一方でなかなか気づかれないもののきわめて重要な盲点を見落としている。それは農産物物流を担うドライバーのナレッジである。現状ではナレッジは明文化されておらず、ドライバーの頭の中にしかない。ドライバーの高齢化と併せてこのままでは貴重なナレッジが消滅する。なぜナレッジが必要だと考えるかについて、農産物物流を難しくしている要因として挙げられる①農産物特有の事情、②輸送に関する事情、③荷主の事情、④配送先の事情、⑤その他の5つから整理した。結論として、ナレッジをシェアできる体制ができれば、農産物輸送を敬遠するドライバーも減り、今後のドライバー不足解消につながる可能性があるのではないかと考える。
キーワード: 農産物物流、物流の2024年問題、働き方改革2024、物流効率化、ドライバー、ナレッジ矢野 尚幸
公益財団法人流通経済研究所 客員研究員/玉川大学 経営学部 国際経営学科 准教授
二宮 麻里
大阪市立大学大学院 経営学研究科 准教授