折笠 俊輔
公益財団法人流通経済研究所 主席研究員
折笠 俊輔
公益財団法人流通経済研究所 主席研究員
本稿では、食のサプライチェーンのDX動向について、現在の食品流通の課題を検討したのち、DXにおける技術開発の動向を、具体的なサービスなどを取り上げながら、①データ連携、②履歴取得、③見えないものを見る(位置情報の高度化)、④自動化による工数削減の4つの視点から整理した。後半では、具体的なサービスの1つであるスマートフードチェーンプラットフォーム「ukabis」について、その特徴やデータ連携の技術的な方法、コードの標準化、これからの展望について紹介した。
キーワード: 農産物流通、スマートフードチェーン、農業DX、ukabis、サプライチェーン岡本 数彦
株式会社シノプス 常務取締役
全国103社、約5,900店舗・拠点に提供している当社の需要予測型自動発注サービ「sinops」は、PI値に基づいた購買指数を基本ロジックとし、さまざまなデータから高精度な需要予測が可能だ。このロジックを業界に先駆け、2008年より日配品、2021年には惣菜にも適用。値引き・廃棄ロスの削減と利益率の改善を実現している。こうした高精度な予測データを活用し、小売店舗と物流センター間の物流改善にも成功。今後は小売企業内の最適化のみならず、小売企業の需要予測データを卸売業や製造業につなげ、「川上からの物流コスト削減」を目指す「デマンドチェーンマネジメント」(DCM)を実現するために実証実験を行っていく。
キーワード: 需要予測型自動発注、日配品、惣菜、物流改善、デマンドチェーンマネジメント望月 洋志
合同会社nito Co-Founder
米国でリテールメディアが勢いを増している。すでにデジタル広告のうちの16%をリテールメディアが占めており、近いうちに20%に迫ると言われている。広告事業は利益率が高く、魅力的なマーケットだ。実際、ウォルマートの営業利益のうち5%もリテールメディアが貢献しており、クローガーの利益改善にもリテールメディアが貢献している。このように、米国大手小売企業を中心として急成長しているリテールメディアの勢いは日本にもやってくるだろう。しかしながら日本では、現時点でデジタル広告のうちリテールメディアが占める市場規模は0.4%程度にとどまっている。これは時間の問題なのか、あるいは別の要因があるのか。日本と米国では小売企業を取り巻く環境も異なるだろう。同じようなトレンドが来ると安易に考えるのはいささか乱暴だと思われる。では、日本市場において小売企業やメーカーはリテールメディアについてどう向き合えばいいのか。その日本独自の環境要因と解決のアプローチについて考察した。
キーワード: リテールメディア、アマゾン、ウォルマート、ターゲット、クローガー田代 英男
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員
流通・物流業においては、少子高齢化・人口減少による深刻な人手不足やそれに伴う人件費の高騰、国際情勢悪化に起因する原材料・エネルギーコストの高騰により、運営コストが高くなっている状況にある。このような状況の中、サプライチェーンに内在する様々な課題の解決と新たな価値の創造を実現するため、電子タグ、電子レシート、カメラ等のツールを活用し、店舗をスマート化するとともに、これまで把握できなかったデータを解析し、その結果をサプライチェーンで共有することで、最適な流通を実現する動きもある。
そこで、弊所での電子タグに関わる実証実験の結果を踏まえ、RFIDの活用に焦点をあて、加工食品流通の効率化について整理した。その結果、RFID等の新技術導入による効率化を図るために考慮すべき事項を、「コスト」、「標準化」、「導入のメリット共有」と位置付けた。
神成 淳司
慶應義塾大学 環境情報学部 教授