神谷 渉
公益財団法人流通経済研究所 客員研究員/玉川大学 教授
矢矧 晴彦
PwCコンサルティング合同会社 シニア・アドバイザー
ヨーロッパは54カ国が含まれる広域で、経済やインフラ、小売業界の多様性に富む。デジタル技術に対しては、アメリカやアジアと比較して保守的であり、新技術導入は先例や効果に基づく慎重な判断が特徴である。例えばドイツのMetroやイタリアのCoopは早期にデジタル技術を取り入れたが、その展開は限定的であり、フランスは新技術を早期に試す傾向があるが、本格展開は稀である。一方、イギリスとドイツは実験的な取り組みを継続し、堅実に技術を導入している。フリクションレス店舗やグローサリーEC、スマホアプリ、AIの活用など、テクノロジーの活用は目的ではなく手段として考えられており、オンライン専業のOcadoのように自社で技術開発を行う事例もある。それらの事例から、欧州小売業はデジタル技術を活用しているが、DXを目的にするのではなく、顧客提供価値の向上に注力していることがわかる。
キーワード: デジタル技術、フリクションレス店舗、グローサリーEC、デジタル変革、テクノロジー活用の目的林 克彦
流通経済大学 流通情報学部 教授
イギリスのネット通販市場では、アマゾンUKがトップを独走する一方、伝統的な実店舗小売業者が店舗網を活用したクリックアンドコレクトによりオンライン販売を拡大してきた。とくにグローサリー分野では、実店舗やダークストアからの配送によるオンライン販売と、実店舗での販売とを組み合わせたオムニチャネルが強みを発揮している。コロナ禍のオンライン需要激増に対し、グローサリー小売はマイクロフルフィルメントセンターの整備や即配事業者との提携により対応している。
キーワード: クリックアンドコレクト、オンライングローサリー、オムニチャネル、ダークストア、マイクロフルフィルメントセンター矢野 尚幸
公益財団法人流通経済研究所 客員研究員/玉川大学経営学部 准教授
新型コロナウイルスの蔓延を機に、アメリカ国内のオンラインショッピングの需要は高まっている。それに伴い利便性を求める声が高まっているが、小売業は人手不足が進んでいる。そこで、省人化およびコスト削減施策として、BOPISやサードパーティによるインストアピックアップが実施され、ロボット配送などが実験段階にある。BOPISは店内の売上増加にも貢献することから、今後も店舗での実施強化が推測されるが、競争が激化するため、リピートしてもらうための施策が重要となる。ロボット配送は、現時点では長距離での配達には難があり、小売業が本格的に採用するには、もうしばらく時間がかかるものと見られる。
キーワード: ラストワンマイル、BOPIS、Click and Collect、ロボット配送、Coco李 雪
公益財団法人流通経済研究所 特任研究員
ウォルマート中国は、伸びが鈍化した2010年代から一転して、ここ5年間で売上が1.4倍に拡大した。2022年度では初めて売上高は1000億元(約2兆円)を突破し、中国最大のスーパーマーケットチェーンに成長している。これは、中国消費者ニーズへの原点回帰、ハイパーマーケット業態の縮小と会員制倉庫店業態の拡大の同時進行、店舗(オフライン)とオンラインの両方に取り組むオムニチャネル戦略の実施などによって実現できたといえる。特に、ダークストアを有効に活用し、より少ないコストで短期間に売上を拡大することができた。
キーワード: スーパーマーケットチェーン、オムニチャネル、会員制倉庫店、ダークストア、クイックコマース石原 武政
公益財団法人流通経済研究所 顧問/大阪市立大学 名誉教授
杉本 ゆかり
跡見学園女子大学 兼任講師
中村 博
公益財団法人流通経済研究所 理事/中央大学大学院 戦略経営研究科 教授
非計画購買の促進は感動的な顧客体験価値を高め、消費者の買い物満足を向上させるために有効であると同時に、メーカーや小売業にとっても売上を高める効果的な施策として古くから議論されてきた。しかし、非計画購買の類型について精緻な議論はあまりなされてこなかった。例えば、これまでの非計画購買類型の1つに想起購買があげられるが、具体的な施策を講じるためには課題が残る。例えば、想起はどのような刺激により何・誰を思い出して反応するのかなど、考察を深めることはマーケティング戦略の示唆を得ることにつながる。
本研究は、消費者の直感的な思考(システム1)が非計画購買に影響をおよぼすと考え、非計画購買類型の拡張を試みる。調査では、消費者へのデプスインタビューによって非計画購買の精緻な購買動機を分析する。また、カスタマージャーニーの視点から非計画購買の起因となる購買前および購買後の意識と行動について検討する。
秋川 卓也
日本大学 商学部 准教授