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機関誌「流通情報」バックナンバー

No.568 | Vol.56 No.1(2024年5月発行)

特集 2024年度の消費・流通の展望

特集にあたって

池田 満寿次
公益財団法人流通経済研究所 上席研究員

生活者の買い物意識の今と注目ポイント
 ――買い物意識調査「消費者の業態・店舗選択に関する調査」より

池田 満寿次
公益財団法人流通経済研究所 上席研究員

 

 五月雨式の値上がりはピークアウトしたものの、物価の高止まりは続いている。厚生労働省が毎月公表する「実質賃金」は前年割れが続き、インフレを跳ねのけるような力強さは依然として欠く。日常の買い物においても、生活防衛への意識が読み取れる。また新型コロナウイルスの第5類移行に伴い、生活者の外出機会が増えたことに起因する買い物意識の変化が見受けられる。買い物を取り巻く環境変化のスピードは速く、顕在化する変化にいち早くキャッチアップすることが一層重要になる。流通経済研究所が主宰している「ショッパー・マーケティング研究会」では毎年、全国規模の買い物調査を実施している。本稿では2023年12月に実施した調査結果より、物価高の影響をはじめとした買い物意識をめぐる注目すべき変化や今後に向けたポイントを考察していきたい。

キーワード: 物価高への対応、第5類移行による買い物変化、多忙さがストレスに、消費を喚起する視点
2024年度の小売業界の課題と展望
 ――国内戦略をめぐって

白鳥 和生
公益財団法人流通経済研究所 特任研究員/流通科学大学 商学部経営学科 教授

 

 2024年度の小売業界は、人手不足といった構造的な問題を抱えつつ、デフレからの転換、「金利のある世界」へと経済環境変化の潮目にいる。AI(人工知能)やロボットの活用による生産性の向上は待ったなしであり、その巧拙が企業間の優勝劣敗を左右する。ドラッグストアでは大手を軸にした再編が現実味を帯び、小売業界全体でも規模拡大や事業ポートフォリオの見直しが目立つ。多様化し、複雑化する生活者の支持を得るためには「量」を「質」に転化する姿勢が求められる。それがブランド強化につながる。

キーワード: 小売の再編、物流の2024年問題、脱・同質競争、パーパス経営
地球沸騰化時代の消費・流通

常盤 勝美
株式会社True Data 流通気象コンサルタント

 

 国連のグテーレス事務総長が2023年7月、「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰化の時代が到来した」と会見で発言した。その影響が消費・流通にも現れ始めていることが購買データの検証から示された。今後の消費・流通を展望するにあたり、検討すべき観点を5つ掲げる。1.顕著な高温の時期が多いことへの対応、2.長い夏への対応、3.強い台風接近への対応、4.季節の急進行への対応、5.ナレッジの構築である。2024年の天候も高温傾向の時期が多くなることが予想されており、地球沸騰化に対応した新たな食習慣・生活習慣の模索・適応など、取り組みの加速が求められる。

キーワード: 地球沸騰化、極端気象、長い夏、夏物商戦、BCP
新商品による需要創造の研究
 ――「Yakult(ヤクルト)1000/Y1000」を事例に

田嶋 元一
公益財団法人流通経済研究所 研究員

 

 本稿では、新しい需要を創造した新商品として株式会社ヤクルト本社の「Yakult1000」と「Y1000」に焦点を当てる。これらの商品が大ヒットした背景には、健康課題の解決という社会問題/消費者ニーズを正しく認識し、そこに自社の強みやブランドを生かした販促が奏功したことが挙げられる。ヒット後の現在でも堅調な購買実績が確認でき、本商品は消費者ニーズに寄り添った高い付加価値を有したことで着実に受容された、まさしく需要創造のモデルケースとなる商品であったと言えよう。

キーワード: Yakult1000、Y1000、需要創造、消費者ニーズ、高付加価値

レポート

リテーラーの注目取り組み
 ――セブン&アイの「SIPストア」がもたらすもの

池田 満寿次
公益財団法人流通経済研究所 上席研究員

対談 リーダーの戦略

イオンのベトナム海外戦略

古澤 康之
AEON VIETNAM CEO

聞き手 中村 博
公益財団法人流通経済研究所 理事/中央大学大学院戦略経営研究科 教授

寄稿論文

産業組合と商権擁護運動(下)

石原 武政
公益財団法人流通経済研究所 顧問/大阪市立大学 名誉教授

視点

マーケティング研究における日本の競争優位性について考える

清水 聰
慶應義塾大学 教授

資料紹介

海外の流通&マーケティング

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