2018.2.13 更新
木島 豊希
公益財団法人流通経済研究所 主任研究員
卸売業同士の共同物流を考える背景
物流環境は全体的な労働力の不足や地方部での需要量減少等に伴うコスト負担増が続いており、各企業では持続的で効率的な物流づくりが課題となる。特に、物流機能を中核とする企業の多い卸売業にとっては対応が急務である。
加工食品卸売業が加盟する業界団体、一般社団法人日本加工食品卸協会は、「加工食品卸売業の共同配送推進の手引き」を作成し、2017年11月に公表した。この手引書は、「地域レベルでの配送に困っている加工食品卸売業」同士の共同配送を推進することを目的としている。共同配送(共同物流)で世間に知られるのはメーカー同士の事例が多く、卸売業同士の共同物流はあまり知られていない。
卸売業同士の共同物流への第一歩
小売業の専用物流センターに複数の卸売業が預託在庫する取引は、卸売業同士の共同物流と捉えることもできるが、小売業主導である。今後期待される卸売業が主導する共同物流は、不特定多数の小売店舗や専用物流センターに対して商品を出荷する汎用物流センターを利用した共同物流である。例えば、伊藤忠食品、三菱食品、日本酒類販売は、スロームーブの酒類を共同保管し、共通の出荷先である専用物流センターに対して共同配送している(食品新聞社『食品新聞』2017年12月04日)。
この取組は卸売業同士の共同物流の先進的な事例であるから、まずは先の手引書にある通り、共通の届先に対して互いの荷を積み合わせて共同配送するところから始めることが肝要である。地方部などでは、需要量の減少や商品回転率の低下等により、卸売業1社単独では荷がまとまらない場合がある。こうした課題は各社で共通しており、先の手引書を活用して「お見合い」をすることが共同物流への第一歩である。
卸売業ならではの共同物流の可能性
小売業の多くは複数の卸売業者から商品を仕入れており、同じ商品でも小売業が異なれば仕入先の卸売業者が異なる。すなわち、卸売業各社は同じ商品を所有しながら、販売する商品は異なるとしても、販売先小売業だけは共通であることがある。
このとき、複数の卸売業に対して共通の販売先小売業から異なる商品が発注されても、卸売業間で情報を共有すれば、物流上はいずれかの卸売業の1拠点から、発注された商品全てを一括して出荷することができる可能性がある。物理的に出荷しない方の卸売業にとっては、小売業に対してサービス水準を維持しながら、商品を汎用物流センターから横持ちせずに共同物流が成立する。メーカー同士では実現できない、卸売業ならではの共同物流である。
前提となるのが、小売業の複数帳合制、卸売業の総合的な品揃え、汎用物流センターの同地域での立地などである。実施には、受注情報の共有や物流コストの負担、債権債務の処理など課題はあるかもしれないが、こうした情報処理で輸送を削減できるのであれば、検討に値する。
今後は、卸売業が、積合せ等の共同配送や、汎用物流センター1拠点を利用した共同保管・共同配送、また卸売業ならではの共同物流などを検討し実施することに期待したい。
<参考文献>
一般社団法人日本加工食品卸協会「加工食品卸売業の共同配送推進の手引き」2017年11月
http://nsk.c.ooco.jp/pdf/20171115_2.pdf