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2020.4.24 更新

新型コロナウイルス感染症拡大下でのスーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア業界などの事業展開に関する仮想Q&A

根本 重之
公益財団法人流通経済研究所 理事/拓殖大学 名誉教授

●そうするとスーパー、ドラッグ等の食品、衛生用品等の売上もいずれ落ち込むということか

-当面は必ずしもそうではないと見ておきたい。
-緊急事態宣言が解除されても、感染リスクは容易には消えず、仕事、余暇ともに多くの人が家で過ごす時間を長くするから、外食から内食への需要のシフトは続き、内食のベースラインが上昇した状態が続くものと考える。
-買いだめられすぎた品目には反動減があろうが、家での生活時間が長くなると消費が増える品目の売上は、経済全体が相当悪化しない限り、大きく落ち込むことはないと見たい。
-感染対策用の衛生用品への需要はベースラインが上昇した。
-消費者は、外出を抑制され、スーパーやドラッグストアに行くしかなくなるので、それら業態の来店客数は増え、数量PI(千人当たり販売数量)が変わらないとすれば、販売数は増えることもあるはずだとも見ておきたい。
-ただし店舗の混雑回避を理由に入店制限をしなければならなくなると、売上面でもリスクになるおそれもあるが、来店頻度が下がれば、PIが上がり、客単価が上がることもありえよう。
-他方、外食産業は大きな打撃を受ける状況だろうから、内食、外食を足した食の総マーケットは残念ながら縮小しそう。

●厳しい状況下、消費者は価格志向を高め、低価格品、PBなどに流れるようになるのではないか

-そういう傾向はもちろんあるが、そうばかりではないと思う。
-将来不安がまた大きくなってしまったうえ、所得が低下し、職を失う人も増えてしまうから、そうした人たちに向けて値頃な商品を提供することは重要。
-しかし多くの人々は、外食や旅行、また耐久財の購入などを控える分、家で食べるものまで質を落とすとストレスが大きくなりすぎるから、そうはしないとも思う。
-だからストレス解消になる、楽しい提案を積極的に行って、いいものを売ってゆきたい。
-外食需要の減少により高級食材などの価格が下がっているから、そうしたものを家庭で上手く活用できる料理情報を提供し、それらをキーにしたメニュー提案などもしてゆきたい。

●今年は、新製品はうまくゆかず、控えた方がいいという意見をもつ専門家もいるようだが、どうか

-業種、分野によって異なるはずだ。
-車やスマホなど、購入延期が可能で、購入にあたって人との接触が必要になる分野は、確かに厳しいだろう。
-しかし食品や日用品は、必需性が高いものが多いうえ、セルフ・サービスで売れるから、そうした問題は軽微なはず。
-しかも消費者は外出抑止にうんざりする分、逆に新製品への期待度、受容度を高める面もあるはずだから、新製品導入計画は揺るがさず、むしろ積極的に行くべきだと思う。
-新型コロナ状況に対応した新製品も追加で検討してみたい。いろいろ出てくるはずで、この努力はメーカーはもちろん、小売業も惣菜、生鮮、和洋日配などの分野を中心に行うべきだ。
-広告費は下がるだろうし、テキスト、写真、動画によるSNSもみんなより使うようになっているから、楽しく、いいメッセージを発信し、新製品を導入する、むしろチャンスだとみたい気もする。
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