コラム
2020.4.24 更新
新型コロナウイルス感染症拡大下でのスーパー、コンビニエンスストア、ドラッグストア業界などの事業展開に関する仮想Q&A
根本 重之
公益財団法人流通経済研究所 理事/拓殖大学 名誉教授
●もう終了予定時期が間近になっているキャッシュレス消費者還元については、拡張、延長といった声も聞こえたが、どうなるとみているか
-第1次補正予算には入らなかったし、経済産業省の担当も拡張、延長ともやりたくないと言っているという情報が入ってきている。
-土壇場での逆転があるかもしれないが、今のところ、下記3つの理由で拡張、延長ともなし、予定通り6月終了が基本シナリオなのではないかと思っている。
・当初取りざたされたが、第1次補正予算に入らずに牛肉券とともにシャボン玉のように消えた
・1人当たり10万円の特別定額給付金が出る
・第2次補正予算を組むには少し時間がかかり、予算の確保がもう時間的にも難しい
-そうなると、6月は、還元終了の駆け込み需要が一定程度あるはずで、還元店での月末の売上の伸びは想定し、準備をしておきたい。
-中元セールの前倒し、ウナギの予約販売といったこともあるかも知れない。
-食品スーパー大手は、年度の出だしがよく、チラシ特売をやめる状況が続いているから、無理な対抗はせず、冷静な対応をすることになるかもしれない。
-しかしそれでも、新型コロナウイルスをめぐる状況がどうなっているかにもよるが、6月最終週、必要ならば動けるようにはしておいた方がよさそう。
-政府支援が終了すると、それを受けていた中小・中堅チェーンは、決済手数料を全額負担したうえ、客離れのリスクにも直面する。
-これによりそれらチェーンのなかで弱いところがかなり倒れるとも思っていたが、コロナ特需が延命支援になるかもしれない。
-なお、9月予定のマイナポイント事業は、あまり準備が進まず、延期されるのではといった話も聞こえてくる。
●今年の流通業界の動向として注目していることはあるか
-スーパーマーケットとドラッグストアの連携に注目している。
-北海道でコープさっぽろとサツドラが提携、関東ではウエルシアとUSMHが提携した。
-またサミット会長になった竹野氏は、住友商事のライフスタイル・リテイル事業本部長になり、サミット、かつて店長をしたマミーマート、そして自らが創業したトモズを管掌することになったから、3社の連携を進めるだろう。
-スーパー各社は、ドラッグストア品目が自店で売れることも分かったはず。
-スーパーがドラッグストアと連携することにより、スーパーの店舗に調剤部門ができ、さらには調剤のドライブスルーサービスや宅配を行い、食・薬両方で地域包括ケアにも貢献できるようになるといいとも思っている。
-だがまずはスーパーとドラッグストアの連携が各地で進み、それが小売競争の構図を変え、また流通を変えてゆく可能性があることを考えてほしい。
●最後に長期的な展望、そして課題は?
-弊研究所2018年実施の長期予測では、内食、日用品の市場は、人口減少、高齢化、世帯の家族類型構造の変化に加え、世代交代により、2020年以降、縮小するとともに、生鮮の大幅減少、冷凍食品の大幅増などが起き、その構造も大きく変わると見てきた。
-だが、短期的には外食需要のシフトによって生鮮を含め、内食市場は拡大しそうだ。
-しかし新型コロナウイルス感染症リスクの顕在化により将来不安が大きく高まり、また人の行動や接触を抑制するため、合計特殊出生率がもう一段下がり、人口減に拍車がかかってしまうだろう。
-そのために長期的には従来の予測以上に市場は縮小すると見なければならないだろうと考えている。
-したがって企業は、生産性をあげてゆくことが必要だが、それはあくまでも必要条件。
-十分条件は新たな環境に適応する進化だと考えている。
-その方向性は見えないのだが、この業界では、「日本のスーパーマーケットを楽しくする」「三方よし」など、サミットの言っていることは、いい線の1つだと思っている。
-生産性を上げることは必要だが、既存の姿のままそうするだけでは、生き延びられず、またそれだけでは楽しくない。
-より少ない人数で仕事ができるようになると、そうした仕事に就ける人はいいが、就けない人、仕事を失ってしまう人が増えることも考えてゆかなければならないだろう。
-そして今回あらためて判ったことは、生産性の高い産業、企業は成長をもたらすために重要だが、今回のような危機になれば、もちろん望まないところではあれ、一時的には休むことや勤務形態を変えることができる。しかしもう一方で、人々の命を救える医療や介護とともに、毎日の暮らしを支える産業、企業が社会の存続のために不可欠で、その度合いは、そこで働く人々が大きなリスクに曝されていることは明らかであるにもかかわらず、実施的に休むことも勤務形態も変えることも許されないほどであるということだ。
<備考>
上記は、それぞれ4月23日(木)、27日(月)にオンラインで開催した下記研究会での報告のまとめの部分をベースとするものです。それぞれのご案内が本ホームページ内にありますので、ぜひ一度ご覧下さい。
・量販チャネル研究会(メーカー向け)
・消費と流通の明日を読む研究会(流通業および流通業をサポートする企業向け)
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